第1章

1-2 カナダの治安は本当に良いのか

| カナダの治安をどう評価すべきか

カナダの都市は世界で最も住みやすい都市ランキングでも上位に入る国で、一般的に治安が良いと言われますがそれは本当でしょうか?結論から言うと、その通り良いと認識しています。治安の良し悪しをどのように判断するかは難しいですし、人によって感じ方が異なることもあるでしょう。都市部と地方では少し違うかもしれませんが、私自身が住むバンクーバー市については、普段の生活で犯罪を身近に感じたことはほとんどありません。

もちろん、明らかに治安の悪そうなエリアは存在します。外務省のカナダ安全対策基礎データを見ると、犯罪発生率 (人口10万人あたりの犯罪認知件数) は日本の約10倍あり、置引きやスリなどの軽犯罪だけではなく、銃器や刃物による強盗など暴力的な犯罪も近年発生してきていることは確かです。実際に身近で銃犯罪を感じた方もいるでしょう。日本と比較すると少し不安になるかもしれませんが、バンクーバーでの個人的な感覚としては、時間帯とエリアを気を付けて行動すれば、あまり神経質になり過ぎる必要はないと感じています。ただし、日本人にあまり馴染みの無い大きな問題が2つあります。それはホームレスとドラッグです。

| ホームレス問題と住宅事情

カナダのホームレス問題では、トロント、モントリオール、バンクーバーなどの都市部で深刻化しています。エリアはある程度限られているのですが、実際にバンクーバーに来た当時にその場所の近くを歩いてみて路上生活者の多さに驚きました。東京にもある程度存在しますが明らかに規模が違います。

問題の主な原因は住宅価格の高騰です。Rentals.caの最新データを見ると、賃貸価格については2024年をピークに現在は落ち着いています。バンクーバーでの肌感覚としても昨年あたりから供給量が増え、それまでの高止まりが和らいでいるように見えます。しかし、CREA (The Canadian Real Estate Association) の2026と2027の住宅市場予測によると、金利の下げ止まり感から過去の繰り越し需要が動き出したことなどから住宅販売件数と平均価格ともに上昇するとの予想を出しています。政府によるシェルターなどの支援プログラムも当然あるわけですが、問題の解決にはまだ長い時間がかかると感じます。

| ドラッグ問題が抱える深刻な課題

さらに深刻なのがドラッグの問題です。ここ10年の間でフェンタニルなどの過剰摂取による死亡が急増し、2023年のピークで約8,000人以上が薬物中毒で亡くなっています。2024年は7,000人台に減少しましたが、1日平均で20人亡くなっていることになります。特にバンクーバーのあるBC州、トロントのあるオンタリオ州、アルバータ州 (この3州で全体の84%) での被害が深刻です。処方鎮痛剤への依存から始まりより安価で強力な違法フェンタニルへ移行するパターンが多く、前述のホームレス問題とも密接に関連し、多くの路上生活者が依存症を抱えているといわれています。

カナダでは2018年から大麻が合法化され、バンクーバーのあるBC州では2023年から一部薬物の少量所持を非犯罪化 (2024年から公共の場での使用を禁止) しています。依存症を犯罪ではなく公衆衛生問題として扱うアプローチを行っていますが、この件については根が深く容易に解決できる問題ではないでしょう。

| カナダで安全に暮らすために

私はカナダと日本以外だと、東南アジアの複数国とアメリカに住んだことがあります。北米以外の私の居た国々では厳格な法か宗教の縛りでドラッグはほとんど流通しておらず、銃犯罪も聞いたことがありませんでした。それらと比較してしまうと、特定のエリアでの治安の悪さは目立ちますが、それでも総合的に見れば、カナダは安全に暮らせる国だと感じています。2つの懸念される問題点を書きましたが、日本とは異なる社会問題があることを理解し、当たり前のことですが、基本的な防犯意識を持って生活することが大切だと言えるでしょう。

カナダ留学論

第1章 カナダ留学について

 1-1 なぜカナダ留学なのか
 1-2 カナダの治安は本当に良いのか
 1-3 カナダの高校の教育水準と留学事情
 1-4 留学エージェントの使い方