1-4 留学エージェントの使い方
| 留学エージェントの価値とは
私たち家族はカナダでの子供の留学にあたって、初期の手続きサポートに留学エージェントを利用しました。そのサービス内容については満足していますし、私は無闇に留学エージェント批判をするつもりはありません。留学エージェントには確かに価値があります。ただし、あなた自身がやるべきこともすべてを任せてしまうことは避けなければなりません。
留学エージェントの最大の価値は、初期の手続きサポートと現地で何かあった場合の緊急サポートです。ビザ申請の手続き (移民コンサルタントとの調整)、学校への入学申請、現地での住居手配など、慣れない海外の手続きを代行してくれることは心強いものです。特に初めての海外生活であったり言語の壁がある段階では、こうしたサポートは大いに助かることでしょう。
しかし、ここで勘違いをしてはいけないことがあります。学校とのやり取りや本人の学業上の課題、例えば進学希望の大学の出願条件に合ったカリキュラムの確認などは、事業者ではなく本人が行わなければならないということです。状況把握のための初期のサポートは必要としても、学校に通い出した後は、本人が自分で考え、自分で行動する必要があるのです。留学エージェントはあなたが使うものであって、あなたの代わりに人生を決めてくれるものではないのです。
| 確認すべき点 (1) – 出口戦略の実績
「カナダ 高校留学」と検索すると、カナダの高校留学サポートに関して豊富な経験を持った留学エージェントが数多く存在しているのが分かります。ビザサポートに関しても同様で、ワーキングホリデーや学生ビザの取得サポートを軸に各分野で専門的なサービスを提供していることが分かります。それでは、留学エージェントを選ぶ際に重視すべき点は何でしょうか?その一つは、出口戦略についての見解と出来ればその実績データを持っていることです。ここでは主に高校留学について話しますので、出口戦略とは大学進学へとどのように結び付けていくかということになります。
多くの留学エージェントは、入学させた留学生の数などは宣伝しますが、私の知る限り、その後の卒業率や大学進学率といったデータを公開しているところは見当たりません (もしされている事業者があれば教えてください、ぜひ評価したいです)。いろいろと他社と比較されたくない事情もあるのでしょう。ただし、個別に相談をしている場合はここについてきちんと聞くべきだと考えます。実際にサポートした方々の進路や卒業出来たかどうかは、もちろん利用者の資質にもよるのかもしれませんが、無理な留学の勧めを行なっていないかどうかを確認することも大事です。
留学エージェントに相談する際には、紹介してもらうだけではなく、少なくとも以下の点を確認すべきです。高校留学の場合、入学させた留学生のうち何割が卒業できているのか、卒業できなかったケースではどのような理由や原因があったのか。そして、卒業後に現地の大学に進学した割合はどのくらいなのか。ここの詳細をあまり言いたがらない留学エージェントは注意するべきでしょう。せっかくの高校留学を、良い経験だったね、で終わらせるのはあまりにも勿体無いです。もしまだ実績の無い事業者であれば仕様がありませんが、少なくとも出口戦略である大学進学などへどのように結び付けていくかの観点は必ず持つべきでしょう。
| 確認すべき点 (2) – 出口の先の長期的な視点
長期的な視点を持つことは、留学エージェントだけではなく先ず自分自身が考えて軸を持つことから始まります。その上で留学エージェントと相談をしないと意味がありません。将来の視点があることで、現時点でのアドバイスも逆算して考えることで理路整然としてきます。もしも留学エージェントに長期的な視点が無い場合、それは極めて大きな問題と言えるでしょう。留学後の学生の状況は人によってバラバラです。高校で平均95%以上の成績を取り世界ランキング上位の大学への進学を視野に入れることができる方もいれば、ESLから抜け出せずに卒業すらもままならない方もいるでしょう。その方々を一緒くたにして、とりあえず近視眼的に入学させてしまえばいいと考えるのは乱暴なことです。
留学エージェントの主な収入源は、多くの場合は学校側からのリベート (紹介手数料) です。そのため、ユーザー側への課金が少ない、あるいは無料でサービスを提供するケースが多いと思います。これは利用者にとってありがたいことですが、一般論として、収入源である学校側の方を向いてしまう構造的なインセンティブがあることは理解するべきでしょう。例えば、留学フェアなどに参加すると、「有名私立校への進学実績」を謳う事業者がおり特定の学校を積極的に勧めてくることがあります。その学校が本当にあなたにとって最適なのか、それとも事業者にとって都合が良い学校なのか、見極める目を持つ必要が出てきます。
事業者のウェブサイトでは「高い教育水準」や「治安の良さ」といった美辞麗句が並びますが、具体的なデータに基づいた情報提供はあまり多くありません。カナダの公立高校は留学生の受け入れに英語力の要件を課さないケースがほとんどで、これは「誰でも留学できます」と言いやすい環境ですが、裏を返せば、英語力が不十分なまま現地に送り出されるリスクがあるということでもあります。このようなユーザーにとってのダウンサイドのリスクについても、長期的な視点を持っている留学エージェントであれば心配はいらないと言えるでしょう。
| 主体性を持って先を見る
カナダで有名な留学エージェントのウェブサイトをいくつか注意深く見てみると、新規で留学に来た方々の事例は多く紹介されているものの、その後の大学進学や卒業後のキャリアについての情報があまり少ないことに気づきます。高校入学や大学進学だけではなく、その先のキャリアデザインまでを一貫して考えることができる留学エージェントは残念ながらほとんどいないと感じています。その部分に関しては、もしかすると別の専門家に任せるべきなのかもしれません。
留学エージェントの情報を鵜呑みにせず、学校の公式サイト、卒業生の進路データ、現地の評判など、複数の情報源から判断することが肝心です。人任せにせず自分で情報をしっかり取得して理解すること、これは当たり前のことですが、留学という大きな決断の前では意外と忘れがちです。留学する本人やその保護者が自分で徹底的に調べることに勝る方法はありません。
最後に、費用面についても整理しておきましょう。Vancouver School Boardやそれ以外の学区をざっと見る限り、カナダBC州の公立高校の留学生としての学費は概ね年間16,000〜17,000カナダドル (約190万円) です。なお、保護者が2年制公立カレッジや大学の学生ビザを持っている場合、子供の公立学校の学費が免除される制度もあります。ただし、州によって条件は異なるため詳細は専門家に相談すべきです。こうした選択肢も検討すべきでしょう。
自分の留学の目的を明確にし、留学エージェントにはその目的を達成するための手段としてサポートしてもらう。本当に必要なのは、高校入学から卒業、そして大学進学、さらにはその先のキャリアデザインまでを見据えた長期的な戦略です。その主体的な意識を持つことが、留学を成功に導く第一歩なのです。
